殺るか、殺られるか 4 (親という仕事) | ヒトコワ新聞

殺るか、殺られるか 4 (親という仕事)

殺るか、殺られるか 3の続き

実は、まだ、犯人の顔も名前も知らない時に
私宛に一本の電話があった。


「電話が入ってます。お取りください。」


との声に、いつものように電話を取る。
すると、初めて聞く声の男性からの電話だった。



電話の主:「あのう、えむさんでしょうか?」
えむ   :「はい」
電話の主:「すいません、私は○○の親です。このたびは
      すいませんでした。」


なんと、犯人の親からである。


しかし、その時まだ誰が犯人か、そして名前すらも知らない。
つまり、私にとってはさっぱり意味がわからないのだ。


(以後 え:えむ 親:犯人の親)


親:「うちは車の修理工をしているので、えむさんの
   車を修理させてもらえないでしょうか?」


え:「・・・」


少しの沈黙があった。



顔も知らない犯人の親から電話がかかってきた。
しかも、名前も顔も知らない、誰かの親からだ。
まだ謝罪の言葉も、誰一人からとして聞いていない。
それをいきなり


「うちの修理工場に車を入れてくれ」


ときたもんだ。


・・・。







本当に始末が悪い。




私は怒りで煮えくり返っていた。


親は私の沈黙に戸惑っている。



親:「あのぉ~、えむさんですよねぇ・・・?」


え:「はい、そうですが・・・。」


親:「・・・。」

え:「・・・。」


しばらくの静寂が流れる。
そして・・・。




完全にキレた。




え:「あなたねぇ・・・。」


え:「私は生徒の名前を顔も、そしてあんたの顔も知らないんだよ。
   それを見ず知らずの人から「うちの工場に入れてください」って
   言うのはどういう神経なんですか?」

親:「・・・。」

え:「修理うんぬんの前に、普通は顔見みせて「すいません」って
   謝るのがなんじゃないですか?」


親:「すいません・・・。」

親:「うちも連絡がいっていると思ってたんで・・・。」



・・・。


っていうか、



連絡ってなんだよ!


え:「直接話もする前から修理うんぬん言われても、
   これじゃ話になんないんで・・・。」


親:「はぁ・・・。」


え:「私は混乱してますよ。いきなり知らない人から「車を預からせて
   くれ」って言われているようなもんですから。
   とにかく、話が先だと思うんですが。」


親:「そうですね・・・。わかりました。また連絡します。
   すいませんでした。」



なんなんだろう、コレは。


私の中の普通は、息子が不祥事を起こしたら真っ先に飛んできて
「すいませんでしたっ!」と頭を下げるもんだと思ってたよ。
このままでは、加害者の言動、行動が





まったく理解不能。
である・・・。


殺るか、殺られるか 5 につづく。