殺るか、殺られるか 7 (因果応報) | ヒトコワ新聞

殺るか、殺られるか 7 (因果応報)

殺るか、殺られるか 6 の続きです。


それから、翌日のこと。


例の中学校から一本の電話が入った。
学年主任からだ。


「あぁ、えむさん、先日の件なんだけどね。」


「なにか?」


「向こう側が修理の
 見積もりくれっていってるんだけど・・・。」



・・・はぁ?


なんで「車交換しろ」って話が




修理の
見積もり
になってるんだよ!!!!




「あの~、先日は車交換しろって要求しましたよね。
 それから向こうからなんの考えも聞いてません。
 それをいきなり「修理の見積もり」が出てくるんですか?」


すると学年主任


「いや、母親が父親に言ったらしいんだけど
 そんな無茶苦茶な話があるか!って言ってるらしくて。
 あと、あの話合いであなたが「指落とせ」とかいったのが、
 母親、気になったらしく、それをお父さんに言ってるみたい
 だったわ。それで無茶苦茶なっていうのもあるだろうね。」



ふぅ~ん。


ぜんぜん、理解してないんだね。



そりゃ、いきなり車交換しろ、っていわれりゃ
逆ギレするわな。気持ちわかるよ~。



しかしだな・・・。



私のツラも見たことない


私の話もロクに聞いていない


謝罪にも来ていない


話の一部だけを鵜呑みにして逆ギレする


クソッタレな父親に


そんなこと言われる筋合いなんじゃないのかな?


無茶苦茶なのはダレよ?


この



クソ親父ドモめが!



「あの~、顔も見ていない相手に「無茶苦茶」呼ばわりされるってのは
 私とても心外なんですが。そちらがそういう態度をとるんであれば
 私も今回の件、あらためて考え直さないといけないと思うんですよね。」


「ましてや、ボンネットの修理ならともかく、修理には交換が伴うので
 車の価値自体が下がります。これは見積もりでは通常出せないはず
 ですよ。」


そこで学年主任。


「じゃあ、ボンネットの修理代の見積もりだけでも取れないか?」


おい。


おい。





おい!



なんで車の価値が下がるっていってるのに
「修理代のみの見積もり」を請求してるんだよ!
なんでこんなに散々されているのに、この期におよんで
加害者側に有利なコトの運び方してるんだよ!


この時から、学校側への不信がいっそう深まる。


「とにかく、そういうものの言い方を加害者側はしてるんですよね。
 正直言って今の加害者側の言い方だと、まったく誠意が感じられません。
 もう、お金は結構ですから、出るところにでようかな、という考えが
 今、めぐってるのですが・・・。」


学年主任は電話口で「しょうがねぇか。」という雰囲気を
漂わせながら


「あ~、わかりました。とりあえず見積もりはとれないってことで
 いいのね。また連絡します。」


と、逃げるように電話を切った。



この後、学校側に頻繁に呼び出される。



校長からは「調整の余地を残しておいてくれ」


学級担任は「迷惑かけてすいませんねぇ・・・。」


そして、今回の事件で橋渡し役をしている学年主任は


「えむさんとしてはどうしたいの?」


と聞いてくる始末。


「向こうはどうですか?」


と、聞くと


「お金の件はお父さんに任せる、と母親は言っているそうよ。
 父親は前、話したとおり、車の交換には応じられないって言ってる。
 で、えむさんはどうしたいの?」


えぇ。答えましたよ。


「私は言うだけ言いました。いきなり、見積もりとか言ってるみたいですが、
 見積もりの額がいくらなら払ってくれるんでしょうね。
 私の要求に対し、どこまでこたえきれるのか、まったく見えないですよね。
 これだけの精神的苦痛を受けて、話も聞きにこない父親が
 できるだけ安く済ませよう、というのが目に見えるんですよ。」


「いったい「誠意」ってなんですかね。」


話を続けた。


「最近眠れず、考えがめぐっているのですが・・・。」


「もう、私の中ではお金の問題ではありません。
 車の破損、精神的苦痛、そして加害者の誠意のなさ。
 どれをとっても、もう、お金をいくらもらっても
 うれしくもなんともありません。」


「たとえ、新車に替えてくれたとしても
 もう、話にならないです。そんなことでは、とてもじゃないけど
 満足のいく解決とは思えません。」


すると学年主任


「じゃあ、父親を呼んで謝ってもらえばいいわけね。」


私は言いました。


「向こうから謝りたい、という気持ちもないのに、無理やりさせる
 コト自体、誠意がないんじゃないですか?」


「私は常に「因果応報」というスタンスです。
 やったことに対して結果がでる。
 つまり、彼らには社会的制裁が必要だと思います。」


「本来、大人が物損事件を起こし、被害を与えた場合には警察に
 被害届を出し、起訴するのが普通だと思います。
 今回の事でも、本来、警察に被害届を出して起訴するのが
 本来の筋だと私は考えます。子供にとっても、親にとっても。」


学年主任は


「わかったわ。じゃあえむさんはボンネットの修理○○円を
 きちんと支払って、父親が謝ってくれたら許してもらえる
 ってことね。」







ぶちっ。



あんたたちも「敵」か?
なんで被害者がこんな目にあわないといけないんだよ。
そんなに俺の不幸を加速させたいのか?





「なんで、学校側がそういう「安く安くしよう」という対応を
 とるんですか?加害者や被害者がそういうのを言ってくるなら
 ともかく、何でいつも私が不利なようにコトを運ぼうとして
 るんですか????」



私の剣幕に、学年主任もキレた。
横にいた校長に


「校長、私、もうこれ以上の調整は無理ですっ!できません!
 連日職員はこのことで夜遅くまで残っているんですよ!
 最近、有休とる人が多いのは過労のせいですよ。
 もう調整はできませんっ!」


バタン!


部屋から出て行ってしまった・・・。






その日から・・・。
私は腹を決め、よく眠れるようになった。


ネットで器物破損、少年法、起訴、裁判について調べ
周囲のお世話になっている人たちにもことの経過を話し
「もしかしたら裁判に突入する」事を相談した。


全員が「お前は筋を通せ!」とむしろ、後押ししてくれた。
そのことも学校側に告げた。


ただ、肝心の父親たちとはまだ会っていない。
とりあえず、会って話してからでも遅くはない。


それまでの間、ボンネット修理の見積もりを取り、
車買取専門店で無理を言って車の価値がどれくらい下がるのかを
査定してもらった。
当然、店によって違うし、規定も違うので、見積書は出して
もらえなかったが、口頭で証言してくれる、との確約をとった。
家から新車で買ったときの見積もりも出てきた。
こういう書類関係はとっておくと、後に自分をよく助けてくれる。




学校側から加害者側への呼びかけで、父母と学校、そして
私との三者面談の日が決まった。


私は、良くも悪くも、その日が話し合いの最後だと決めていた。
もちろん、折り合いがつかない場合は・・・。そのことも。


その日の当日、まず、先生方と加害者側の両親が話し合いを持ち、
その後、三者の話し合いというスケジューリング。


「えむさん、下に来てください。」


例の学年主任が呼びにきた。


「一応、向こうの両親も悪いと思ってるってことなんだけど、
 あなたも前みたいな発言は今日は言わずに、ビジネスライクに
 コトを運んでね。」


・・・。


どこまでも腐ったヤツラだ。



案内された会議室の前に
たどり着く。


入り口に立つと



加害者の父母四人


担任二人


学年主任二人


生徒指導一人


教頭


校長



総勢11人が待ち構えていた。



私はそのエリアに静かに足を踏み入れた。


殺るか、殺られるか 8 につづく