ヒトコワ新聞 -3ページ目

殺るか、殺られるか 10.5 (現実)

殺るか、殺られるか 10の続きです。


「平成16年12月13日、月曜日。」


このシリーズをごらんになっていただいているみなさん、
乱文、誤字脱字、そしてエゴの塊のようなエントリーに
お付き合いいただいて、本当に感謝申し上げます。


残念ながら、このシリーズ。すべて私の身の回りで実際に起きた
ノンフィクション、つまり


現実
であります。


この話は今から約2ヶ月前に起こった現実、であります。


そして、このシリーズを今週続けて、足早に書いたのは
理由があります。


「平成16年12月13日、月曜日。」


本日から数えて3日後のこの日が、この事件が続くか、終わるかの
ターニングポイントになっているからです。


すこし、話は変わりますが、人間嫌いである私のblog、
「ヒトコワ新聞」のテーマを象徴しているような
人間関係、世の中の不条理さ、ありえない事件、事故・・・。


あらゆるものがこのシリーズには凝縮している、
と自負しております。


皆様には残念なことと思いますが、
このblogは一般的な読者想いのblogではありません。
私の唯一の・・・自我の毒を吐く場所です。


ランキングの推移に象徴されるようにこのシリーズを書くと、
どんどん訪問者数、ランキングともに下がっていきます。


しかし・・・。


もし、お時間があるなら、ぜひこのシリーズのコメントを
見てください。


「楽しみにしています。」と話の続きを期待して下さる方。

まるで、自分のことのように憤慨してくださる方。

自分もひどい目にあった、と体験談を切実にお話される方。

私に「がんばれ!」とエールを送ってくれる方。

コメントせずに、でも何度か訪れ、見守ってくれている方々・・・。







一部の方がこのシリーズを読むと、


「オマエは本当に世の中がわかってねぇな!」


と不快な思いをされる方もいらっしゃると思います。
むしろ、そちらの意見のほうが大多数かもしれません。


しかし・・・。 このシリーズを見て共感してくださった方々、
本当に本当に、ありがとうございます。
私にとってみなさんは 本当に、私にとっては心の温かい方ばかりです。


このシリーズはまだ終わっておりません。


しかし、このシリーズの次のエントリーでもしかしたら
エンディングです。


「平成16年12月13日、月曜日。」


もしかしたら、出るところに出るかも知れません。
この日は、不安でもあり、希望の日でもあります。
もちろん、その後はこのblogにてご報告したいと思います。
当日に確実にご報告できるかは、まだわかりませんが
わかり次第、ご報告したいと思います。


私は・・・。


次のエントリーでこのシリーズが最後になればいいな
と願っております。


最後に。

皆様の暖かいお気持ち本当にありがとうございます。

「平成16年12月13日、月曜日」まで、

もうしばらくお待ちください。 
 えむ



それは・・・現実。
「殺るか、殺られるか」

~ 目次 ~




殺るか、殺られるか 1 (金属バット)
私はいつものように仕事を終え、愛車が待つ駐車場へ向かう。
悲劇が待っていることも知らずに。

殺るか、殺られるか 2 (職員室殺人予告)
見えない敵、繰り返される不安。
私は逃げずに宣戦布告を受けて立つことにした。
そして、全県民巻き込んでの指名手配捜索がはじまった。

殺るか、殺られるか 3 (イカレタコドモ)
犯人は、少年に見える。しかし、幼い。
そして、まったく理解不能な言語を発していた。「かっこいいから」だと。

殺るか、殺られるか 4 (親という仕事)
親は、子供を生み育てる、と法律で定められている。
親の仕事とは、何か・・・。

殺るか、殺られるか 5 (指詰めろ。)
「価値観」。この意思疎通の壁を乗り越えるのは容易ではない。
しかし、伝えなければならない。そして「責任」の意味も。

殺るか、殺られるか 6 (神はいない)
なぜ、人は現実を直視しないのだろうか。
なぜ、人は自分自身の言動の意味を理解できないのか。

殺るか、殺られるか 7 (因果応報)
罪は罰により償わなければならない。
そこから逃げようとするものは、許してはならない。

殺るか、殺られるか 8 (許せない)
ついに、総勢11名が待つエリアへ足を踏み込む。そして私は
彼らに対し「憎悪」の感情が増幅しているのを感じ取る。しかし・・・。

殺るか、殺られるか 9 (最後の妥協点)
いつか、終わりを告げなければならない。
私は最後の妥協点を見出した。

殺るか、殺られるか 10 (約束)
ゲームは延長戦へ。そしてまた、いつものような日常に戻る。
私自身は少し変わってしまったが・・・。


殺るか、殺られるか 10 (約束)

殺るか、殺られるか 9の続きです。


「2ヶ月後まで待ってもらえないでしょうか・・・。」


一人の父親が申し訳なさそうに、こう言った。


「すいません。お金の面で、都合がつかないので・・・。
 12月にお支払い、ということでお願いできないでしょうか・・・。」


支払い金額は15万円。
しかし、加害者2人で割るので7万5千円。





7万5千円。





この父親はもう一人の父親に比べ、紳士的な人だった。
また、きれいなスーツや、身なりをしており、私の目には金銭面で
困っているように見えなかった。


もし、私が加害者側で、普通の仕事をして、ブラックリストに
載っていない社会的信用も普通にある立場の人間なら、
たとえその場で7万5千円持っていなくても



無人君に即ダッシュするのに。



私はこう言った。



「私は、こういう問題が長引くとお互いにとって
 あまりよくないんじゃないかと思います。
 しかし、正式にこの場でお約束していただけるのならば、
 私はかまいません。」


「あとは、加害者さん同士でお話してはいかがでしょうか?
 まぁ、もう一人の加害者側が立て替えて私に
 お支払いして、あなたはそちらにお支払いする、
 という選択肢もあるとは思いますが。」

 
「その辺は、加害者さん同士で決めてください。
 加害者さんたちも長期化するのはいい気持ちしないのでは
 ないですか?」


・・・加害者同士で協議している。


どうやら、まとまったらしい。


「え~、では12月にお支払い、ということでよろしいで
 しょうか?ご両親の方。」


学年主任がまとめる。


私は口を挟んだ。


「12月、というのはアバウトなので、何月、何日、何時、
 という風に具体的に 日時指定をしたほうがいいかと思います。
 あとで、ああじゃない、こうじゃない、という問題が
 起きるのは嫌なので。」


私は大勢証人がいる「この場」で、確約がほしかった。
往々にしてこの手の問題は時間が経過すると、それだけで
複雑になると思ったからだ。しかも、2ヶ月。



ここで勝負を決めなくては。




「12月の10日以降なら、お支払いできます。」


先ほどの父親が言ってきた。


「え~、では・・・。
 12月10日は金曜日ですので、すこし余裕を持って
 12月13日、月曜日でどうでしょうか、みなさん。」


学年主任がまとめる。


私、加害者側、両者とも、うなずく。


「では、12月の13日、加害者側がえむさんに
 15万円お支払いするということでよろしいですね。
 金銭の受け渡しはどうしましょうか?」


加害者側と、学校が協議している。


「決まりました。受け渡しは加害者側から私(学年主任)が
 預かり、それをえむさんに渡す、ということで決まりました。
 これで両者、よろしいですよね?」


両者、うなずく。



・・・しかし、「2ヶ月」だ。
この2ヶ月の間に何があるか、わからない。


私は念を押し、こう言った。


「すいません、ちょっといいですか?
 これは、この話し合いのなかで決まった確約として
 お互い実行する、というのを確認させてください。
 たとえば、私が「もっと金をくれ」だとか、
 そちらさんが 「いや、やっぱり払えないよ」というのは
 お互い、一切なしにしましょう。
 その辺はお約束できますか?期日の面も含めて。
 もし、無理があるなら、今のうちに申し上げてください。」


すると、加害者の父親の一人が


「いや、こちらも同じ気持ちです。この金額で許して
 いただけるというのは変わらないんですよね・・・。
 こちらもそのようにお願いしたいです。」



・・・上手く、まとまったようだ。


「あの・・・。」


例の修理工場を営んでいるほうの母親だ。


「修理代の領収書はいただけますでしょうか?
 ○○自動車のやつです。」


私は

「それはかまいませんが、金額的に加害者側が1家族あたりが
 支払う額と差が出ますよ。しかも、この車両価値が落ちる分に
 ついては領収書がでません。そこらへんはどうなんですか?」


と返す。


この発言の目的はおそらく、税金対策だろう。
自動車業を営んでいるとのことなので、
同じ業種の領収書なら経費扱いにでき、節税できる。


もしくは、私がそのお金で修理するかどうかを
疑ってみているか・・・だ。


本当に・・・子供が哀れでならない。


加害者同士、この件について話し合い
まとまったようだ。
私も、この件に関して承諾する。



もう何時間、過ぎたのだろうか。
私は壁掛け時計に目をやる。



話し合いは夕方6時から始まり、時計はもう夜9時を回っていた。
加害者側の子供は、どこで夕飯を食べているのだろうか?


「では、最終確認もいたしましたし、もうだいぶ遅くなっているので
 閉じたいと思います。お疲れ様でした。」


学年主任が促した。


「お疲れ様でした~。」


いっせいに11名が頭を下げる。





みな、会議室から外に出て行く。
職員が、安堵の顔を浮かべながら
一人、一人、外へ・・・。



その中で、校長が父親と握手をしている場面が目に入った。
「生徒と共に、またがんばりましょう」
と、声をながら握手をしている。




私は、この親たちが心底にくかったが
今後、何かあった時スムーズに行くように私も父親のところに近寄った。


父親の一人に声をかけた。


「お疲れ様でした・・・。
 お母さんから聞いた時、「嫌なヤツだ」とお思いでしたでしょう。
 実際、私は本当に嫌なヤツです。
 今回ばかりは相手が悪かったと思って勘弁してください。」



すると、父親
「いえ、これで本当に許していただけるんですよね。」


私、
「えぇ。もちろんです。お疲れ様でした。」


と、声をかけ軽く握手、隣の父親に向かう。


「お疲れ様でした・・・。」


先ほど、「待ってくれ」と言った父親だ。


「本当に申し訳ありませんでした。
 ラジオでのこと、奥様には私が犯人でしたとお伝えください。
 申し訳ありませんでした。」


その父親とも軽い握手をし、スッっと離れた。





ちなみに私は、本当に好意を持っている人と握手する時は
力強くする、アメリカンスタイルだ。



・・・そばにいた母親達は、バツが悪そうに会議室から
そそくさと出て行く。


その足で、自分の荷物がおいてある職員室へ向かう。


職員は、先程会議室にいたメンバー以外は誰もいない。
みな、思い思いに「やっと終わった」という顔をしている。


私は、その場で
「みなさん、本当にありがとうございました!」
と、深く頭を下げた。
声も、広い職員室いっぱいに響くように。


話はまとまった。


あとは、約束が果たされるか、どうか。


本当にこの幕が閉じるのは、
少なくとも2ヶ月後以降になる。





私はしばらく車に乗らず、出勤していた。


2週間に1回の洗車もこの1ヵ月半、していない。


ツバは雨で流されていたが、ボンネットはへこんだままだ。


加害者の母親はこの話合いのあと、身近な父兄や関係者に


「えむさんって知ってる?あの人さぁ・・・。」


と、自分の親しい周囲に私への批判を撒き散らしているらしい。
それは、私の耳にもすぐに届いた。


また、関係者以外知らないはずの話が、父兄などの
周囲に漏れていた。
その事件の最中、突然、校長室に電話があり、


「校長、車の事故があったんだって!?」


と校長の周囲の方からも電話が入ったらしい。
父兄経由というところをみると、批判を撒いているというのは
疑いの余地がない。学校長もそう思っているようだ。



そして私は・・・。


いつもと同じ日常に戻った。



ただ少し違うのは
いつもより・・・。




車を止める場所に気を使うようになっただけだ



殺るか、殺られるか 10.5 に続く。

殺るか、殺られるか 9 (最後の妥協点)

殺るか、殺られるか 8の続きです。

・・・5分ほど、時は経過していた。
私は、私の価値観で最大の妥協点を見出す。


「車の価値が下がる分は、先ほども申し上げましたとおり、
 現在の私の車を業者に売るとき、別の店では何万円価値が下がり、
 また、他の店では価値が下がらないかもしれません。
 今までのお話を総合して考えてみても、まぁ、価値が下がらなければ
 幸いですが、価値がそれ以上下がる、となった時に
 今の私の心境では、納得できるものではありません。」


「あなた方は、ただ車をなおせばいいだろう、と考えているのでしょうが
 はっきり言って、私はこの車を手放す気持ちのところまで来ています。
 正直、お金の問題としては当の昔に、通り過ぎています。
 そちらからすれば、残念な話でしょうが、当たった相手が悪かった、
 とでも思ってください。私はこういう人間です。」


「あなた達の要求はわかりました。
 そして、私の要求は以前と変わりません。
 私の要求がそのまま通ることは、恐らくないでしょう。
 
 そして・・・
 あなた方の要求をそのまま受け入れる気もありません。」


「理由があります。」


「もう一度言います。
 この車が、私のすべてをかけた車だからです。
 私の今までの人生をかけた車です。
 私だけでなく、妻も大事にしていた車です。」


「しかし、現実問題として、話を進めなければいけません。
 お互いの妥協点を見出さなくてはなりません。」

「私も要求を言いました。あなた方も言いました。
 私の要求金額は新車買い替え金額280万円でした。
 しかし、私の妥協点は、
 ボンネット修理費、車両査定価格落ち金額、そして
 将来、より私が損害をこうむる可能性を考えた金額と
 して、そちらの支払い希望金額のプラス3万円・・・。」






「15万です。」







加害者側は、私の顔ではなく、見積もりをずっと見ている。


「280万円の要求を15万というところまで落としました。
 私は妥協点を提示しました。
 もし、将来、これ以上車の価値が下がったとしても、
 この金額をお支払いしていただけるのであれば
 私は一切の追加請求はいたしません。あとはあなた達が
 どうするか、です。」


続けて学校側が「今だっ」といわんばかりに
たたみかける。


「えむさんがこれだけ提示しているので、あとは
 ご両親がどうするかなんですが、どうですか?」


母親の一人が隣の父親に


「今日のところは持ち帰って話したほうが・・・。」


と不満気な顔をしている。


父親の一人は


「いや、これは実際損害を与えたほうは私達だから
 払うべきじゃないのか・・・?どうですか?○○さん」


隣の父親は


「はぁ・・・。まぁ、しょうがないですよね・・・。」


父親同士、協議している。


「えむさん。」


父親が切り出した。


「先ほどのえむさんが言っていた金額15万でよろしいんですね。
 これで許していただけるんですね・・・?」





「はい。」





私は答える。


「これで・・・。これで、えむさんに許していただけるなら
 そのとおりで結構です・・・。これでいいですよね○○さん。」


父親が、隣の父親に確認する。


「えぇ・・・。それで許していただけるなら・・・。
 この度はすいませんでした。」


学年主任がまとめる。


「えぇ~、金銭面についてはこれで両者、よろしいでしょうか。」


私も、加害者も、小さくうなずく。


「では、これで解決ということで・・・。
 お互い、何か一言ございましたら・・・。」


まずは加害者側の父親から・・・。


「この度は申し訳ありませんでした。
 本当にこれで許していただけるのであれば助かります。」


もう一人の父親


「本当にすいませんでした。そして、奥さんにも迷惑を
 おかけして申し訳ありませんでした。
 ラジオを聴いていて、大変申し訳ないと、奥さんにも
 お伝えください。すいませんでした。」


そして私。


「最後に一言だけ、言わせてください。
 あなた達のお子さんは、確かにひどいことをした。
 しかし、私に謝り、自分の責任を果たすということを
 約束してくれました。
 そういう意味で彼らは、きちんとケジメをつけたと
 思います。」


「しかしながら、罪は罪、罰は罰です。
 私が約束させたことを、ぜひ、お父さん、お母さん、
 応援して、見守ってあげてください。
 以上です。」


加害者側、両親4名が頭を下げた。


学年主任がシメに入る。


「えぇ~、この件はこれで終わりたいと思います。
 両者これでよろしいですね。
 では、終わります。お疲れ様でした。」


終わった・・・。


これで、ようやく終わった・・・。


・・・疲れた。


とにかく、疲れた・・・。






「で、お支払いの期日はいつにしましょうか?」
学年主任が加害者側に声をかける。




「あの~・・・。」










「2ヶ月後まで待ってもらえないでしょうか・・・。」






一人の父親がそう言った。


殺るか、殺られるか 10 へ続く。

殺るか、殺られるか。 8 (許せない)

殺るか、殺られるか。7 の続きです。


総勢11名が今日の話合いのために配置された
テーブルを囲んでいる。


私の席は教師側、教頭、校長、その次の席。
加害者側の両親は少しうつむいている。


「まずは改めてご挨拶を・・・」


学年主任が声をかけると、例の母親たちと
はじめて見る男性二人が立ち上がり、
その男性たちは


「私は○○の父です。この度はご迷惑をおかけしました。」


もう一人の男性は


「○○の父です。前は電話で失礼いたしました。
 ご迷惑をおかけしました。」


と頭を下げた。


ようやく加害者の父親、登場である。



私と、加害者の両親、お互い少し頭を下げ、着席する。
学年主任が話を進める。


「え~、この前の件に関しましては、ご両親とも悪いという気持ちが
 あって、今回、話し合いのために来てくださいました。
 前回はお母さん方しか、おりませんでしたので
 今回はお父さんの方から、えむさんに今の気持ちを伝えてください。」


父親の一人が、それに応える。


「この度はすいませんでした。今日、学校側からえむさんの車への
 思い入れを聞いて、本当に申し訳なく思っています。
 申し訳ありませんでした。」


もう一人が


「この度はすいませんでした。○○さんのお父さんと同じ気持ちです。
 実は、この前ラジオで「学校で働く職員が車を壊された」という
 放送が流れてまして、私も聞いておりました。あれ、えむさんですよね?」


あ・・・。
うちのカミさんが指名手配したやつだな・・・。


「えぇ、うちのカミさんがやっていたみたいですが。」


すると、父親


「実はあの時、車の中で聞いておりまして、ひどいヤツがいるもんだ、と
 思っておりました。まさか、私の息子がやっているとは
 思いもよりませんでした。この度は申し訳ありませんでした。」


と頭を下げる。


カミさんの大捜索はとりあえず、効果があったらしい。


「えむさんからは、何か?」


学年主任が話を振る。


「この度は教育上、良くない発言をしました。謝罪申し上げます。
 申し訳ありませんでした。」


周りが静まる。私もこれ以上、何も言わなかった。
この発言をすることでとりあえず母親の機嫌をとっておく。
もちろん、血圧は上がっていただろうが。
それでも、謝ったのは理由がある。


私の今日のコンセプトは


「静」


だからだ。
つまり、相手を見ることに意識を集中していた。


「え~、お互いとりあえず悪かった、ということで話は済みましたので
 後は金銭面の話ですね。えむさん、どうですか?」


相変わらず、何も話をわかっちゃいない学年主任。
こっちは返事待ちだというのに。


「私は言いたいことは申し上げました。」


一瞬にして緊迫ムードが高まる。


・・・。


校長が割って入る。


「えむさんね、一応今の時点でえむさんがどのくらい具体的な賠償を
 求めているのか、もう一度お父さんたちに伝えたほうがいいのでは
 ないだろうか?
 その・・・ボンネットの修理でいいのか、前と変わらず車交換なのか
 もしくはどのくらいの金額でいいのかとか・・・。」



・・・。


私は黙っていた。


そのまま3分くらいの時間がたったのだろうか。
周りの神経が高まり、テンションが張っている雰囲気は
まだ消えない。


「じゃあ、申し上げます。正直言って、金銭や修理や、車交換では
 もう、私は納得できません。」


私のとっさの一言に、空気が変わる。


「しかし、現実問題として、納得できないから、あなたたちの息子を
 半殺しにする、というのも道理が違うと考えます。」


「大変、不本意でありますが、もし、金銭で解決するとするならば・・・。」


・・・校長や学年主任は軽く2回ほど、うなずいている。





「車を交換してください。」



・・・。


「でも、言います。これは私の要求です。
 あなた方が私の要求にどれくらい応えられるのか、現実問題としては
 車交換は無理でしょう。しかしながら、私はあなた方の答えを
 まだいただいておりません。

 私の要求に対し、あなた方はどのくらいのレベルで応えていただける
 のでしょうか?これは以前から言っていることです。」


すかさず学年主任が


「え~、えむさんはこう言っておられます。ご両親からは、何か?」


加害者側はなにやらゴソゴソと話している。
もちろん、その声の端々から漏れる声は私の要求に対し、
否定的な言葉だ。


「あのぉ~。まずは見積もりを見てみないと何とも
 言えないんですが・・・。」


「そうですね。見積もりを見ないとなんとも・・・。」


父親達が発言する。
私には


「こんな金払えないよ。修理代の見積もり見せてみろよ。」
「そうだ、そうだ!」


にしか、聞こえなかったが。


今日のコンセプトに従い、書類を広げる。


新車購入時の見積もり

現在の車の業者買取時の査定書

ボンネットの修理代


私は一つ一つ、丁寧に説明した。


「この中古車査定時の価格はあくまでボンネットがへこんだままの
 状態での価格です。業者の方はボンネットを交換すると、さらに
 価値が○○円下がる、と言っています。」

「書面にはかけないとのことで証言していただける、との
 確約をいただきました。また、この金額はお店によって異なるそうです。」


食い入るように見積書を見ている加害者側。


「なお、この金額には修理時の代車費用は計算に入っておりません。
 また、これだけの思い入れがある車をめちゃくちゃにされた、
 という精神的苦痛による慰謝料も当然入っておりません。」


「あとは、私の話、車の損害を含めて、そちらさんがどこまで
 やっていただけるかです。まだ、私はあなた方の意見、要求を
 聞いておりませんので。」


・・・。


父親達は小声で


「ボンネットは当然として、価値が落ちた分はどうするか・・・。」

「いや、これは損害の金額として出ている分だから、これは
 払うべきだと思いますよ。」

などと、やり取りしている。


その横で、修理工場を営んでいる加害者の家庭の母親が
なにやら言い始めた。


「あの~、この見積もりは○○自動車さんのものですよねぇ。
 あそこは代車タダなんで、代車費用は出ないはずですよ。」


知っているのか、知ったかぶりだかはわからないが、
声を上げている。私には


「余計な金は一円も出さないよ!」


にしか、聞こえなかったが。


続いて、父親。


「あの~、やはり、車交換というのは難しいので、ボンネットの
 修理代をお支払いする、ということでお願いできないでしょうか?」


すかさず私は


「仮に、私への精神的な慰謝料や代車費用を抜きにしても、
 ボンネットを修理した時点で車の価値は下がりますよね。
 なんで、あなたたちから損害を受けて、その損害を
 私が支払わないといけないのでしょうか?」


・・・。
また、父親たちがボソボソ話し始めた。


「やはり、車の価値が落ちる、というのは見積もりにも出ているので
 見積もりに出ている分のお支払い、ということでどうでしょうか?」


・・・。


・・・。


私は腕組みをして黙っていた。


こいつらは、はっきり言って許せない。

いくら払われても許せない。

安く上げようと見え見えなのがもっと許せない。



しかし・・・。


学校側が間に立っている。
この現実は変えられない。
学校の人たちが動いてくれたおかげで、犯人が見つかったという
事実もある。

しかも、あと半年はその職場に出入りする。
コイツラは許せないが、ここで話を蹴れば私のために動いてくれた
職場の人たちがかわいそうだ。
そんな顔をあと半年見るのはつらい。


しかし、許せない。


こんな考えがエンドレスにめぐってきた。


・・・5分ほど、時は経過していた。
私は、私の価値観で最大の妥協点を見出す。


殺るか、殺られるか。 9 につづく。

殺るか、殺られるか 7 (因果応報)

殺るか、殺られるか 6 の続きです。


それから、翌日のこと。


例の中学校から一本の電話が入った。
学年主任からだ。


「あぁ、えむさん、先日の件なんだけどね。」


「なにか?」


「向こう側が修理の
 見積もりくれっていってるんだけど・・・。」



・・・はぁ?


なんで「車交換しろ」って話が




修理の
見積もり
になってるんだよ!!!!




「あの~、先日は車交換しろって要求しましたよね。
 それから向こうからなんの考えも聞いてません。
 それをいきなり「修理の見積もり」が出てくるんですか?」


すると学年主任


「いや、母親が父親に言ったらしいんだけど
 そんな無茶苦茶な話があるか!って言ってるらしくて。
 あと、あの話合いであなたが「指落とせ」とかいったのが、
 母親、気になったらしく、それをお父さんに言ってるみたい
 だったわ。それで無茶苦茶なっていうのもあるだろうね。」



ふぅ~ん。


ぜんぜん、理解してないんだね。



そりゃ、いきなり車交換しろ、っていわれりゃ
逆ギレするわな。気持ちわかるよ~。



しかしだな・・・。



私のツラも見たことない


私の話もロクに聞いていない


謝罪にも来ていない


話の一部だけを鵜呑みにして逆ギレする


クソッタレな父親に


そんなこと言われる筋合いなんじゃないのかな?


無茶苦茶なのはダレよ?


この



クソ親父ドモめが!



「あの~、顔も見ていない相手に「無茶苦茶」呼ばわりされるってのは
 私とても心外なんですが。そちらがそういう態度をとるんであれば
 私も今回の件、あらためて考え直さないといけないと思うんですよね。」


「ましてや、ボンネットの修理ならともかく、修理には交換が伴うので
 車の価値自体が下がります。これは見積もりでは通常出せないはず
 ですよ。」


そこで学年主任。


「じゃあ、ボンネットの修理代の見積もりだけでも取れないか?」


おい。


おい。





おい!



なんで車の価値が下がるっていってるのに
「修理代のみの見積もり」を請求してるんだよ!
なんでこんなに散々されているのに、この期におよんで
加害者側に有利なコトの運び方してるんだよ!


この時から、学校側への不信がいっそう深まる。


「とにかく、そういうものの言い方を加害者側はしてるんですよね。
 正直言って今の加害者側の言い方だと、まったく誠意が感じられません。
 もう、お金は結構ですから、出るところにでようかな、という考えが
 今、めぐってるのですが・・・。」


学年主任は電話口で「しょうがねぇか。」という雰囲気を
漂わせながら


「あ~、わかりました。とりあえず見積もりはとれないってことで
 いいのね。また連絡します。」


と、逃げるように電話を切った。



この後、学校側に頻繁に呼び出される。



校長からは「調整の余地を残しておいてくれ」


学級担任は「迷惑かけてすいませんねぇ・・・。」


そして、今回の事件で橋渡し役をしている学年主任は


「えむさんとしてはどうしたいの?」


と聞いてくる始末。


「向こうはどうですか?」


と、聞くと


「お金の件はお父さんに任せる、と母親は言っているそうよ。
 父親は前、話したとおり、車の交換には応じられないって言ってる。
 で、えむさんはどうしたいの?」


えぇ。答えましたよ。


「私は言うだけ言いました。いきなり、見積もりとか言ってるみたいですが、
 見積もりの額がいくらなら払ってくれるんでしょうね。
 私の要求に対し、どこまでこたえきれるのか、まったく見えないですよね。
 これだけの精神的苦痛を受けて、話も聞きにこない父親が
 できるだけ安く済ませよう、というのが目に見えるんですよ。」


「いったい「誠意」ってなんですかね。」


話を続けた。


「最近眠れず、考えがめぐっているのですが・・・。」


「もう、私の中ではお金の問題ではありません。
 車の破損、精神的苦痛、そして加害者の誠意のなさ。
 どれをとっても、もう、お金をいくらもらっても
 うれしくもなんともありません。」


「たとえ、新車に替えてくれたとしても
 もう、話にならないです。そんなことでは、とてもじゃないけど
 満足のいく解決とは思えません。」


すると学年主任


「じゃあ、父親を呼んで謝ってもらえばいいわけね。」


私は言いました。


「向こうから謝りたい、という気持ちもないのに、無理やりさせる
 コト自体、誠意がないんじゃないですか?」


「私は常に「因果応報」というスタンスです。
 やったことに対して結果がでる。
 つまり、彼らには社会的制裁が必要だと思います。」


「本来、大人が物損事件を起こし、被害を与えた場合には警察に
 被害届を出し、起訴するのが普通だと思います。
 今回の事でも、本来、警察に被害届を出して起訴するのが
 本来の筋だと私は考えます。子供にとっても、親にとっても。」


学年主任は


「わかったわ。じゃあえむさんはボンネットの修理○○円を
 きちんと支払って、父親が謝ってくれたら許してもらえる
 ってことね。」







ぶちっ。



あんたたちも「敵」か?
なんで被害者がこんな目にあわないといけないんだよ。
そんなに俺の不幸を加速させたいのか?





「なんで、学校側がそういう「安く安くしよう」という対応を
 とるんですか?加害者や被害者がそういうのを言ってくるなら
 ともかく、何でいつも私が不利なようにコトを運ぼうとして
 るんですか????」



私の剣幕に、学年主任もキレた。
横にいた校長に


「校長、私、もうこれ以上の調整は無理ですっ!できません!
 連日職員はこのことで夜遅くまで残っているんですよ!
 最近、有休とる人が多いのは過労のせいですよ。
 もう調整はできませんっ!」


バタン!


部屋から出て行ってしまった・・・。






その日から・・・。
私は腹を決め、よく眠れるようになった。


ネットで器物破損、少年法、起訴、裁判について調べ
周囲のお世話になっている人たちにもことの経過を話し
「もしかしたら裁判に突入する」事を相談した。


全員が「お前は筋を通せ!」とむしろ、後押ししてくれた。
そのことも学校側に告げた。


ただ、肝心の父親たちとはまだ会っていない。
とりあえず、会って話してからでも遅くはない。


それまでの間、ボンネット修理の見積もりを取り、
車買取専門店で無理を言って車の価値がどれくらい下がるのかを
査定してもらった。
当然、店によって違うし、規定も違うので、見積書は出して
もらえなかったが、口頭で証言してくれる、との確約をとった。
家から新車で買ったときの見積もりも出てきた。
こういう書類関係はとっておくと、後に自分をよく助けてくれる。




学校側から加害者側への呼びかけで、父母と学校、そして
私との三者面談の日が決まった。


私は、良くも悪くも、その日が話し合いの最後だと決めていた。
もちろん、折り合いがつかない場合は・・・。そのことも。


その日の当日、まず、先生方と加害者側の両親が話し合いを持ち、
その後、三者の話し合いというスケジューリング。


「えむさん、下に来てください。」


例の学年主任が呼びにきた。


「一応、向こうの両親も悪いと思ってるってことなんだけど、
 あなたも前みたいな発言は今日は言わずに、ビジネスライクに
 コトを運んでね。」


・・・。


どこまでも腐ったヤツラだ。



案内された会議室の前に
たどり着く。


入り口に立つと



加害者の父母四人


担任二人


学年主任二人


生徒指導一人


教頭


校長



総勢11人が待ち構えていた。



私はそのエリアに静かに足を踏み入れた。


殺るか、殺られるか 8 につづく

師 2 (恩返し)

ドラえもんのような背中


師 1 の続きです。


私は、その後、ある走り屋仲間に連れられて
一軒のお店につきました。
用意するものは


ヘルメット。

グローブ。

長袖、長ズボン。


だそうです。



何も聞かず、連れられていったそのお店は、
車のレース専門店でした。


「こんなお店もあるのかぁ。」


それぐらい、私にとっては異質に見えるお店でした。


その日はサーキットでレーシングカーで練習走行体験ができる、
というので流されるままに、サーキットに着き、自分の番が
来るまで待っていました。


自分の番が来ました。


・・・。


おもしろい!


私は感動しました。


「峠」という非合法な場所から「サーキット」という合法な場所へ。


「走り屋」という一部からは非難を浴びるような肩書きから
「レーサー」という憧れと羨望の場所へ。


気がつけば、一週間後にはレースカーを手に入れていました。


そこのオーナーがOさんです。


Oさんは少し小太り気味の人でした。


レース活動をしていくと、いろんな人の協力が必要となります。
私は今以上に人嫌いでしたので、その辺で大変レース仲間に
迷惑をかけました。


当然、チームからは「浮いていた」部分もあるでしょう。


それでも、私がレースをやめなかった理由は夢ができたからです。


「レースの世界でプロになる」


という夢でした。

しかし、現在、レースの世界では3歳からレースを始めている
エリートや、金持ちの親のバックアップ、スポンサーがついて
それでも食っていけるかどうかの厳しい世界です。


頭ではわかっていたんですが、夢をあきらめることは
できませんでした。


そのことをOさんに相談すると、世間知らずの私を応援して
くれるとのこと。とても心強く感じました。


そんな決心をしてから、Oさんとかかわる機会が多くなりました。


「技術は目で盗め」


Oさんの口癖でした。



私は、Oさんの一挙一動に目を凝らすようになりました。


実際Oさんは技術屋で、
「できないことは、ない」
というくらい、なんでも自分でやってました。
私は、そんなOさんの後ろ姿をずっと見ていました。


本当に、「ドラえもん」のように
困ったときには何でも自分で解決する人でした。



自分の世界がどんどん広がっていきました。
毎日、自分の世界の色が変わりました。


自分がレース仲間うちでの人間関係でもめたときでも、
常にかばってくれたOさん、


自分がレースで勝つことをあらゆる方面でサポートしてくれた
Oさん。


父親がいない私を、年が近い息子のように、大事にしてくれた
Oさん。


自分の人生の経験から、時には厳しく接し、でも心は温かだった
Oさん。


私がまだ未熟なのに、「レース活動を広げるために上京する」という
わがままを、そして「えむは失敗するだろう」という現実を、
受け入れてくれて、最後まで見守ってくれているOさん。


失敗して帰ってきた私に何も言わず、「時々遊びにこいよ」って
まだ誘ってくれるくれるOさん。


私は・・・。


Oさんのことをとても好きになりました。


今でも、そしてこれからも、
私の人生で尊敬する人の一番であり続けるでしょう。


でも、私はOさんに何一つ恩返しできませんでした。
今でも、恩返しする力はありません。


こんなにたくさんもらっているのに・・・。


今、Oさんは情熱ある人材と、たくさんのお金が必要な
事業に携わっています。


今の私の力では何のサポートもしてやれません。
とても悔しいです。


もし、私が力を持ち、お金を稼ぐ力がついて一人前になったら
真っ先にサポートしたい人です。


この人に出会わなければ、今の私は100%ありえない、と
断言できます。


早く、一人前になりたいです。



すいません、キーボード打ちながら泣いちゃって・・・。
文章ボロボロですね。


今日はこのへんで・・・。

師 1 (出会う前の私)

死にたかった頃


全国1億1900万人の人嫌いファンの皆様、こんにちは。
殺るか、殺られるか」シリーズで散々毒をはき、
でも、まだ続くのよね。のえむです。
みなさん、師走の忙しさに体調は大丈夫ですか?


さて今日のお題はTBステーションの
第5回 あなたが尊敬する人。
について。


えむにしては珍しく、今回は結論を先に言ってしまいます。
私の尊敬する人は



Oさんです。
「お産」ではありません。念のため・・・。



今回はOさんに出会う前の私について
前フリさせていただきます。



Oさんと出会ったのは、私が22歳の時でした。
そのころの私は


明日死んでもいいや。


ってくらい刹那的に生きていました。


実際、車が好きだった私は毎晩「走り屋」と呼ばれる
公道レースをする人たちと、峠で競争を繰り返していました。
えぇ。私も走り屋でした。


とにかく負けず嫌いだったので、スポーツタイプの軽自動車で
パワーがあるスポーツカーと競争し、まさに文字通り


命を削った走り


で数々の車を打ち負かしていました。
(打ち負かした車種、スカイライン、シビック、86、AE101スーチャなど。)


もちろん、負けることもあったのですが、当時は異常とも呼べる
勝率でした。(だいたい8割くらいでしょうか。)


この「走り屋」という狭いフィールドで勝つには、
走りのテクニックが必要とされます。できれば性能のいい車も。
しかしながら、一般公道ですので「度胸」があれば中級者程度までは
勝てたんですよ。


毎日、死にたかった私はこの「走り屋」という世界を知ったとき、
これだ!と思いましたね。


時速○○○km/hからコーナー(カーブ)へハンドルをわずかに
調整しながら、飛び込んでいく。


一つでも失敗したらアウト。


そんな別世界、「死」と隣りあわせの世界から抜けて
「現実世界」に戻ってきた時、「生」の実感が得られる・・・。


そんな、「死」に限りなく近い世界を毎日、毎日楽しんでいました。
その時は仕事を終え、すぐ「峠」に行き、朝方まで走り、
あまりの眠気に家路の途中、車内で眠る。その後、家に帰って
風呂に入って、ネクタイを締めなおし、出勤・・・。


そんな生活を続けていました。


そんな日々ですから、当然、わかりきったことがやってきます。


いつものように走りに行きました。いつも走り慣れている道。
時速も○○○km/h出ていたでしょう。
そんな道の直線の真ん中に、なんと・・・


ガードレールの壁が!


しかもこのガードレールの高さがちょうど私の


頭の高さ
だったんです。


死を望んでいた私には、絶好のチャンスがやってきたわけです。





バーン。






目をつぶっていました。ギロチンのように首が飛んでいる自分を
想像してその瞬間を待っていました。



・・・。



目を開けると、ガードレールが車内に侵入し、
おでこから5cmくらいのところで止まっていました。


死を覚悟した私。


でも生きている私。


・・・。



この時に初めて


「私は生かされているんだ。」


ということを実感しました。


生かしているのは誰なんでしょうか?


神様?

仏様?

誰かの想い?

自分の本能?

運命?


そんなことは私にはわかりません。
しかし、このblogを書いているということは
私はまだ、生かされているようです。


そんな事があって、しばらく「走り」をやめていました。


そこで


「Oさん」


と出会います。


師 2 へ続く。

殺るか、殺られるか 6 (神はいない)

殺るか、殺られるか 5 の続きです。


「さて、お母さん方・・・。
 ここからは金銭面での話し合いです。
 先ほども言ったとおり、私の中では修理したらいいとか
 子供がやったことだからいいだろう、という気持ちには
 とてもなれません。その上でお話させていただいて
 よろしいでしょうか?」



「えむさんの言うとおりで結構ですから・・・。」

母親二人は小さくうなずいている。



「もう、この車には乗りたくない、というのが本音です。
 しかし、この車はローンもまだ残っており、車を売っても
 まだ借金が残る、という状態です。」


「なぜ、私がいやな思いまでして、車を売って、借金が残る、
 これでは正直、納得の行く解決とは思えません。」


「ですので、もし、私にあなた達への要求があるとすれば・・・。」



車を交換してください。



一瞬、周りの表情が固まる。
それから一分間くらいだろうか、みな、下をうつむいている。
そんな中、学年主任が口を開いた。


「え~、私はてっきり賠償はボンネットの修理だけでいいと思って
 いたので、正直戸惑っていますが・・・。お母さんたち、どうですか?」



・・・おいおい。


誰が
「ボンネットの修理だけでいい」って





誰が言ったよ



学校側は早期解決を図ろうとしているのだろうが、
ちょっとこの対応に、学校側に対しても不信感を感じた。


「お母さん側から、何か・・・。」


沈黙が続いているせいか、発言を促す学年主任。



「あの・・・」


母親の一人から口を開く。


「この度はえむさんの大事な車をこのようにしてしまい、申し訳
 ありませんでした・・・。」


もう一人の母親も・・・


「先ほどのお母さんと同じ気持ちです。すいませんでした。
 ただ・・・。」



ん?「ただ・・・?」
何だろう・・・?



「ただ、うちの子はえむさんに悪意があってやったわけじゃなくて
 車がかっこいい、という理由でやったようなので、
 うちの子は
悪い子では無いですから。

 そのへんは理解してあげてください。」





ん・・・?




リプレイ。





うちの子は
悪い子では無いですから。







おいおい・・・。


「車がかっこいい」という理由で
人の車をへこますなら




いい子なのかよ!



お前ら本当に
「すいませんでした」って気持ちあるのか?
普通なら「デキの悪い子ですいません。」って息子を
その場だけでも落とすもんだろうよ。
なんでこの場で罪人を持ち上げるのさ。



しかも、よりによって





うちの子は
悪い子では無いですから。

ときたもんだ。




・・・世の中に神はいないのか?



「えぇ、別にあなたのお子さんが不良とか、人間のクズとか
 そういうこと言っているわけじゃないので、その辺は・・・。」


なぜか、とっさに切り返しフォローを入れる私。
長く営業職をやっているせいか、こんなところで
ソトヅラを発揮。


むしろ、予想外の言葉に一瞬パニックを起こして
口からでたフォローだと思う。


しかし・・・。


この加害者側からは何も


「加害者意識」


のカケラの一寸も感じられない。


「一応、今回の件は私は言うだけ言ったので、後はそちらの対応を
 待つだけです。私は言うだけいったので、終わります。」


深く椅子に腰掛ける。


「・・・え~、えむさんはこのように言っているので、お母さん方、
 とりあえず今日は家にこの話を持ち帰って家族で相談なされたほうが
 いいんじゃないですか?」




学年主任の一言で、この日の話し合いは幕を閉じた。


私としては、この時点で両親揃って話し合い、金銭面でもはっきり
お互いの主張を確認し、折り合いをつけて終了、となる予定であった。
特に、先に電話してきた父親の件もあり、父親同席は当然だろうと
思っていた。



だが、案の定、母親たちだけではなんの解決も、話し合いもできなかった。



「すいませんでした、そこで自分たちはこうしたいんですが」


という提案もなかった。
ただ、謝罪し、金銭面の相談を家に持ち帰る母親。


「これではなんの意味もない。」


私はそう思い、席を後にした。


そこには・・・



校長室に入った直後に想像した状況が現実のものとなり
肩を落とした自分がいた。


しかし・・・。



この話し合いが後に私の


戦闘モード


へのスイッチとなることは、
自分自身でも想像ができなかった。


殺るか、殺られるか 7 につづく。

ボディーブロー

カタイ話が続いたので、今度は・・・。


知る人しか、本当に知らない
蛙男商会」(かえるおとこしょうかい) http://www.dongly.jp/ 


「菅井君と家族石」


ただいま、えむは「笑いのボディーブロー」ダメージ中。


オススメはこの中(←クリック)の画面左側「菅井君と家族石」の一番下の


「十六島海苔」



「LL Brothers 」


くくっ・・・。後からくるなぁ、これ・・。

殺るか、殺られるか 5 (指詰めろ。)

殺るか、殺られるか 4 の続きです。

そして、2日後、ついに犯人の生徒二人と親と学校の三者の話し合いが
もたれた。2日後ってのは遅すぎると思うが、まぁ、あんな親だから
そのまま逃げられるよりはマシか、と自分を慰めてみる。


校長室に入ると左側には犯人生徒二人と母親と思われる
女性二人が座っていた。
右側には担任の先生や学年主任が、奥には校長が座っている。


まずはお互い軽く挨拶を交わし、着席。
学校側の説明によれば、前の電話の件は悪気がなく
早く修理したほうが、私にとっていいのではないか、
という配慮のつもりだったらしい。


学年主任から「えむさんのお気持ちを伝えてください。」
と発言を促された。私はかなり頭にキテいたので、一言


「これから私が言うことは教育上良くないことも含まれて
 います。それでもよろしいでしょうか、先生方、校長、
 そちらのお母さん方。」


周りは首を少し縦にふり、発言を認めた。


犯人の生徒二人にはしっかりお灸をすえるつもり
だったのでこういうことを話した。


私がレーサーという夢をあきらめ、手に入れた車であること。


私が仕事で倒れ、病になった時にでも支えてくれた車だったこと。


この車を買った代金の一部は、私が労働災害にあい、
指を切断してしまった時に支払われた補償金の一部を使っている。
自分の体の一部のような車であること。



私の妻もそんな、この車が大好きで今回の事件で相当ショックを
受けたこと。




ひと時、静かな空気が流れる。


私は抑えた声で、生徒二人にこう言った。


「正直言って、もうこの車に対する愛着はなくなってしまった。
 これだけ好きだった車なのに、乗るたびに思い出すんだよ。
 車中を汚され、壊され・・・。」


「人間で言ったら身ぐるみはがされて、ツバを体中かけられ、
 ボコボコに殴られたようなショックだ。
 これでなんとなく俺の言ってる意味がわかるか?」


「もう、乗りたくないんだよ。理屈じゃないんだよ。
 あんなに好きだったのに、もう乗りたくないんだよ。」



・・・生徒は押し黙っている。



「いいか、この車の金額はお前らがバイトしても簡単に手に入る
 金額じゃない。だが、壊すのは一瞬だ。
 お前らはまったくそんなことを考えてなかっただろう。」


「どれくらいの金額かっていったら、さっき言った指を切断した
 例で言ったら2本分だ・・・。
 もう一度言う。壊すのは一瞬だ。だが、手に入れるためには
 どんなに働いても一瞬じゃ無理だ。
 じゃあ、どうするか?」



 「お前ら一本ずつ指、落とすか?これでちょうど車一台分だよ。」



あたりが張り詰める・・・。


「はっきり言う。俺は指を落としたお金でこの車を手に入れている
 部分がある。ヤクザとは違う。それくらい、俺にとってはすべてを
 かけた車なんだ。」


「もう一度聞く。これは脅迫ではない。説教でもない。質問だ。」



「指、落とすか?」



おおよそ1分くらいだろうか。
みな、たじろぎもせず息を殺している。
私は相手の目をじっと見ていた。


「できません・・・。」


生徒の一人が言った。
もう一人に尋ねる。


「お前は?」


うつむきながら生徒は言った。


「できません・・・。」



・・・私だって、その場で


「指つめます。」


って言われても止めるつもりだった。
しかし、


「できません」


というだけ、コイツラは素直だ。


「そうだろう。おまえらがやるっていってもお母さんが
 止めるだろうな。」


「これからはお金の面の話だから、お前らはもういい。
 お前ら、将来バイトしたら修理代くらいは親に渡せよ。
 自分のケツくらい自分で拭けるよなぁ?それが責任を取るってこと
 じゃないの?」


納得したかはどうかわからないが、これで、生徒側の説教は終了した。


あとは


「親」だ。


正直、両親そろってくるものと思っていたのでがっかりした。
家庭のお金の出所はどこからか、というのを私は知っていたからだ。
当然、物損事件なのでお金は絡んでくる。
そこのところを、この「母親達」は理解しているだろうか?



「さて、お母さん方・・・」


私の会話の矛先は母親に向かった。


殺るか、殺られるか 6に続く。